教育としてのろう教育・聴覚障害児教育・障害児教育
ー 京都のほどんど知られていない障害児教育から学ぶ教育 ー
教室が猛獣の部屋になって勉強どころではない
「定時制には猛獣のような生徒が入ったんだってな。」
「ウオー、ガーガー叫んで、教室をうろついたり飛び出したり。」
「まるで、教室が猛獣の部屋になって勉強どころではないらしいなぁ」
話したこともない全日制の先生が、すれ違いざまに突然話しかけてきた。
「いや、そんなことはないですよ。彼は……」
と説明しようとしても聞こうともしない。
「高校や。山城高校は。動物園じゃない。」
もう話どころではない。
定時制の聴覚障害生徒受け入れに大反対しているひとりの先生とのみ友だちだったことは話からすぐ分かった。
ここで、この不当な言い方に反論すればするほどますます強硬に反対意見を他の先生に風潮することだけなのでその場は納めた。
聴覚障害教育を潰す
ターゲットにされたG君はその波にのったもの
山城高校の聴覚障害教育を潰す最もいいターゲットにされたのが、聴覚障害生徒のG君だった。
彼は入学そうそう自分たちをよく思わない先生に対して徹底的に反抗した。
そして、一番反抗したのが定時制で聴覚障害生徒の受け入れを絶対反対している先生だった。
その先生は、他の先生が授業の工夫に努力していることに対しても反対の急先鋒にたっていた。
それが、G君には解ったんだろう。
わざと大声を出すが、澄んだ声ではない。
その教師には、吠えているとしか映らなかったようである。
さらに、G君はエスカレートして黒板にチョークで字を書いているすきに教室を飛び出し、学校を出るということをくり返した。
そのくり返しは、すべての授業にまで拡大し、当時、学校六日制だったので、土曜日になると必ず休んでW県方面に聴覚障害の仲間を誘ってサーフィンに行ききだした。
多数のろう学校の生徒を連れ出しているG君を指導すべき
その頃、ろう学校からG君をなんとかするように、との生徒指導の申し入れがあった。
聞けば、サーフィンに多数のろう学校の生徒を連れ出しているG君は問題がある、と言う中味だった。
山城高校定時制では、G君はひとり、ろう学校の生徒のほうが多数だったけれど、ろう学校からは、まじめな生徒を引きずり込むG君が悪いので対処すべきという強い意見だった。
非常な矛盾を感じた出来事だった。
集中力と技術のいる捺染の仕事を
15歳のG君が
でも、G君の状況はますます荒れてひどくなるので、G君だけのこととして何度も話をした。
G君は、自分のやっていることに対して、
「自分の自由だから、退学させるなり、処分するなりしたらいい。」
と言って話を受けつけなくなった。
学校だけでなく、彼の働く捺染工場にまで行った。
京都には、今は捺染工場はほとんど見受けられないが、白い反物が横に長く伸ばされ、G君は、木枠に張られたさまざまな文様を順に刷毛のようなもので色づけする仕事をしていた。
1㎜でもずれると、白い反物にタテに白い線がのこる。
でも、寸分のすき間もなく順に色づけして工場の端から端まで染められていく。
乾けば、そこにまた違った文様の色づけをする。
観ていて驚いてしまった。
15歳の彼が、それだけの技術を習得していたのである。
工場長は、彼の腕を高く評価したが、G君は「金、金」の手話で私に合図を送ってきた。
そうこうするうちに彼は学校に来なくなり、本格的にサーフィンばかりをし出した。
ハワイに行ってしまった。
という状況を知るのみになってしまった
Esperanza
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